エベレストは簡単になったか (1)

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エベレスト関連で、13才の登頂者が出た、というニュースと、63才の日本人男性がなくなったというニュースを聞き、そういうシーズンだったかと思い出しました。

 

エベレストの登頂シーズンは春と秋の2回あります。夏はモンスーン(台風)が来て吹き荒れているためほとんど登頂されません。一方、冬季は昔日本隊が登っていますが、同じくあまり一般的ではありません。ちなみに、8000m峰(8000m以上の山)は世界に14個あります。それらは3カ国にしかまたがっておらず、中国(チベット)・ネパールにあるヒマラヤ山脈とパキスタンにあるカラコルム山脈に分かれます。前者は登山シーズンがエベレストと同じ春・秋となります。エベレスト、ローツェ、マカルー、マナスルなどの山々です。パキスタンの8000m峰はモンスーンが来ないため、登山シーズンは春・秋ではなく夏になります。K2やナンガパルパット、ブロードピークなどの山々です。

 

同じ登頂でもひねりを加えると評価が上がるため、冬季に登るチームはいます。ただし、春より夏の方が難しいというのは理解されにくいので夏にエベレストが登られることはほとんどありません。ただし、モンスーン期は雪が多くなるため、滑るためにこの時期をわざわざ選ぶ人はいるようです。ほかのひねりは、無酸素、単独、冬季の中でも厳冬期、バリエーションルート(みんなが登るルートと違うルートから登る)などがあります。それぞれ、無酸素だと医療用の酸素ボンベ以外は持ってあがること自体禁止とか(持ってあがったけど、結果使わなかった、では無酸素とならない)単独はBC以上はすべてのサポート禁止とか冬季だと12月1日以降じゃないとBC以上に足を踏み入れてはいけないとか決まっています。

 

もう一つ小ネタですが、登頂者の間では「エベレストに登った」とは言いません。チベット側から登ると「チョモランマに登った」といいますし、ネパール側から上ると「サガルマータに登った」といいます。エベレストというのは山を発見した人の名前ですが、そもそも発見も何も地元ではそれ以前にそれぞれの言葉で名前がついていたので、その名前を使いましょう、というのが理由です。

 

エベレストの登頂に対する評価は大きく2分されます。1つはエベレストに登っただけで「歴史上に残るプロの登山家」と評されてしまうもの、もう1つは「エベレストなんてお金さえあれば誰でも登れる」というものです。このブログをご覧になっている登山をほとんどやらない方には信じられないかもしれませんが、エベレストなんてお金さえあれば誰でも登れる時代になった、というのは登山を少しかじっている人の間では誰でもが耳にしたことのある言葉となっています。逆に、大学山岳部上がりだったり登山にどっぷりつかっている人には信じられないかもしれませんが、エベレストに登るだけで「歴史上に残るプロの登山家」というのが登山を知らない方の純粋な反応です。

 

私から見ると、両方ちょっと極論です。前者は、エベレストに登るための、8000mに登るための情報がこれだけあふれた世界になってしまったことで、エベレストに登ること自体が冒険(=リスクを冒すことという意味)ではなくなり、かなり高い確率で安全に戻ることが可能だからです。天候次第?今やエベレストの天候は世界各国からFAXで天気図を受け取り、科学的に解析しています。もちろん100発100中ではありませんが。体調次第?それこそ、2か月間体調を維持するのが登山者のアスリートとしての最低限のことだと思います。確かに大変ですが。何が起こるかわからない?もう登頂されて50年以上、日本人だけで200人以上、世界では5000人以上登っていてその蓄積された経験をちゃんと学んでいけばそれほど突飛なことは起こりません。

 

後者は、実際にこれだけ登られるようになっても、死亡事故が毎年起こり、登頂率もほとんど変わらず2割程度ということがまさに実証しています。エベレストが誰でも登れるようになった、のならば、この2割という数字は明らかにおかしな数字です。(2割という数字は登山者の間でまことしやかに言われている数字で、バックアップできる統計がありません。登頂者数はわかるんですが、挑戦者数が分からなくて。。。ただし、私が登った時の自分の隊(2/5)とか、周りの隊の状況を見ているとそのぐらいでした)

 

あれ?この2つの論理は完全に矛盾してないか、というわけで、続きは次のエントリで書きます。

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