あなただったらあの山登れますよ、と簡単に言ってしまう危険な思考

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Yamakaraで、お客様の話を聞いていると、「××に登ってみたいのよね」っていう人に対して、「○○さんだったら大丈夫よー」っていう危険な会話が普通にされています。登山ツアーだけじゃなく、山小屋でも知らない人同士で、「あー意外と大したことないですよ」とか、そういう会話って頻繁にあります。

半分は、「あなたは私よりも体力あるからー」みたいな社交辞令(?)なんでしょうし、目くじら立てることの程でもないか、と思って聞いてるのですが、聞く方も、話す方も結構危険な会話であることは知っておいた方がいいと思います。何度も同じ山に登っていて、そのお客様と何度もご一緒しているガイドでもなかなか判断がつかないのに、一度登っただけ、その人と数回ツアーで一緒に行っただけで行けるかどうか判断できるなんてことはあり得ません。

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1回登ったぐらいで、その山の難易度が分かるわけがない

ガイドをやっていると、同じ山に何度も何度も登ります。

例えば、キリマンジャロ。私は12回行っているのですが、頂上はこんなに違います。

2004年。登頂日前夜から降雪。一気にくるぶしまでうまるラッセル状態
2017年。このメンバーの半分以上は2004年状態だったら登れなかったでしょう
2017年の下山日。降雪。1日ずれてたら。。。温暖化でキリマンジャロの降雪は昔の話、ではありません。

ちなみに、キリマンジャロは赤道直下なので、上が冬期、下が夏期、ではありません。そもそも赤道直下。常夏?常冬?です。

2004年のキリマンジャロの時は、5人のお客様で登頂したのは2人。2017年は10人中10人。

2017年のメンバーで2004年の状況だったら、同じく登頂率は半分を切っていたでしょう。ここ数回私が行くキリマンジャロは全員ウフルピーク登頂が続いていますが、それも天気に恵まれているという幸運があってこそ。もちろん、天候に恵まれているからと言って誰でも登れるわけではない。だから私がついていく意味があるわけですが、天候が悪ければ、そこは、6,000m峰。何か魔法があって誰でも登れるわけではありません。

日本の山も同じです。

ある程度山登りをしている人なら、スニーカーとTシャツで富士山登ったよ、っていう初心者が、「富士山なんて余裕だから誰でも登れるよ、俺はスニーカーとTシャツで登って日焼けが大変だったけど」と豪語していたら、おいおいそれは運が良かっただけで誰でもじゃないだろ、とツッコミたくなるでしょう。でも、ちょっと考えてみてください。それと似たようなことをほかの山でやっちゃっていませんか?「劔岳も早月から行ったら鎖が怖い人でもだれでも登れるよ」みたいなことを言う人を見るたび、、、、ま、放置してますがね。

人に話すことは大事。だからこそ、言い方に気を付ける

自分の経験談を人に話さない方がいい、と言っているわけではありません。むしろ逆で、どんどん話した方がいい。自分の経験を咀嚼して整理できますし、その共有こそが山の楽しみの一つだと思います。

ただ、人の判断をする必要はない。だから、「自分の行ったときは」という限定と、「私はこうだった」という1人称から抜けないようにしましょう。1度や2度のその山の登山と、10年ぐらい登山歴で1回の登山を抽象化、一般化するだけのバックグラウンドはありません。

聞く方が気を付けるべきだ、という考えはもっともです。最終的に山行するのは行く本人ですし、何を聞こうと、判断する人がしっかり判断しなければいけません。ただ、行けるよ、大丈夫よ、と言われれば少なからずいい気持になるのもまた事実。話すときに気を付けることは自分が聞くときに気を付けることにもつながるでしょう。

自分が判断する側になったときはもっと気を付ける

私に××山は行けますか?という質問は、ガイドでも難解です。

今はいい時代で、ヤマレコやヤマップ、その他ブログでいろいろな人の記録が見られるようになりました。記録の内容は参考にならなくても、画像や動画は十分参考になるでしょう。直前期、前年同時期ぐらいの記録はしっかり読み込みましょう。

天気だって、かなりの精度で読めるようになりました。少なくとも2-3個の情報ソースを見比べるぐらいはしてほしい。

その上で、行けるかどうか、行くかどうかの判断は、自分でしましょう。人任せにしちゃダメ。現場で何か起こった時に、誰かのせいにはできないのだから。

もちろん、最終判断を人任せにしている人はほとんどいないと思っています。ただ、人から「大丈夫よ」と言われて、まったく影響受けない、というのも難しいもの。だからこそ、情報の発信する側、受信する側、双方が気を付けることが大事なんだと思います。

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経営と登山のあいだ
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