エベレスト登るのって、何日かかるかわかります?
大体2か月。夏はモンスーンが来るので、そのシーズンを避けてプレモンスーンかポストモンスーンに登ります。私が登った時の例でいうと、プレモンスーンの登頂のために、日本を出たのが3月末、登山開始が4月頭、登頂が5月17日でした。
相撲が数秒、クライミングが数分、サッカーが1時間半、野球が3時間くらい、ウルトラマラソンで十数時間。2か月勝負する競技って高所登山ぐらいじゃないでしょうか。8,500m越える山々だと1か月半から2か月。チョーオユーという8,201mの山に登った時は1か月程度でした。
体の作り方の考え方が根本的に異なる
私がよく講演会などで話す、体づくりの話。高所登山ってものすごく特殊なんです。
上記の表を見てください。
これは、ザックリと、本当にザックリとですが、脂肪が多いほうが有利か、筋肉が多いほうが有利か、という競技ごとの特徴をプロットしたものです。もちろん、技術とか適正とか精神面とか各競技ごとにいろいろあります。ただ、フィジカルは確実に必要なわけで、その身体づくりでどういう身体を目指すべきか、ということを表したものです。
1. 筋肉も脂肪も多いほうがいい競技
体重階級制のない競技の中で、スピードをそこまで伴わない、重力に逆らわないものが主にここになります。相撲、アメフトなんかでしょうか。ポジションによっても違うでしょうけれど。
2. 筋肉が多くて脂肪が少ないほうがいい競技
体重階級制が入ってくる格闘技系や、スピードがある程度必要な競技がここになります。ボクシング、柔道、サッカー、野球。登山もここに入ってくるでしょう。筋肉が多くて、という部分がどの程度か、というのは競技ごとに分かれるでしょうが、大雑把に言うとここに多くの競技が入ります。
3. 筋肉も脂肪も少ないほうがいい競技
まぁ、競技である以上、ある程度の筋肉は必要なんでしょうけど、重力に逆らうような競技は筋肉も脂肪も少ないほうが有利になります。クライミング、新体操、フィギュアスケートなんかもここに入るでしょう。競馬の騎手なんかもそうじゃないかな。
4. 筋肉が少なくて脂肪が多いほうがいい競技
もう、そんなん競技じゃないっ!ただのデブがいいなんて!筋肉は少なく、脂肪が多く。
ところが、高所登山はこのカテゴリに入ります。2か月のエネルギー代謝量が少ないほうがいいので、筋肉は少なく、2か月のエネルギー代謝に耐えるために脂肪は多く。
他のカテゴリでは必要な筋肉量があって、それに脂肪をどうするかを考える。高所登山では、2か月体を維持するための脂肪量があって、それを運ぶ筋肉をつける。そんなイメージです。
私がエベレスト行ったときは10キロやせた
私がエベレスト行ったときは2か月で10キロほど落ちました。2か月、じっとしていても脈が100を越え、食べても酸素がないからなかなか体が温まらない。
もちろん行く前にかなり意識して脂肪つけていきました。それでも帰って来たあと体の組成を調べると筋肉もかなり落ちていました。脂肪が少なく、筋肉をどんどん溶かしていたら、登頂は難しかったと思います。
7900mで酸素ボンベを使い始めたとき、呼吸が楽になるかと思いきや、呼吸よりも体の芯がぼわーっと温かくなったのを覚えています。つまり、現地での食事からのカロリー摂取も低酸素の壁に阻まれて思うようにはいかない。そのためにしっかり脂肪をつけていくのです。
かといって、みんな太っているわけではない。もちろん。
もちろん高所登山やる前にしっかり日本の山で体を動かしている人ばかりですから、見た目から太っている、みたいな人はあまりいません。クライミング技術だったり、スピードだったり、他の要素も大きく、体の組成が全てではないから、ということもあります。
ただ、期間が長く、エネルギー源としての脂肪がこんなに大事になるのは高所登山くらいじゃないでしょうか。
もしチャレンジしようと思っている人は、ぜひ、ご参考に!