そのガイドは、かかりつけ医なのか、スポット医なのか

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槍ヶ岳にチャレンジしてきて、天気も良く、コンディションも2人の体調も悪くないのに、普通に力負けして撤退してきました。

あえて、「普通に」って書いているのは、それが、そもそも想定できていたからです。私も含めた”パーティー”としての力は冬期の槍に及んでいない。いや、さすがに1人で行け、って言われれば行けますよ。でも2人を引っ張り上げるわけでもなく、ガイドではなくリーダーとしてふるまったときに、やっぱり”パーティー”としてという考え方になります。それでは確実に足りない。飛騨沢詰めるには時間がかかりすぎるし、中崎尾根詰めるには、力量が足りない。それでも、今回のお客様2人のこれからを考えると、冬期の北アルプスのど真ん中、本丸を経験しておいた方がいい。ここでの学びと反省は次の数年の山との付き合い方を変える。何より、登山とは何か、山に真摯であるとはどういうことか、そういうものに触れる機会になる。そして、それが来年になれば、いろいろなことが1年ずれ込む、と思ったからお誘いしました。

でも、こういうガイド仕事っていいよね、って思って。大体、登れない人でもなんとか登らせようと手を変え品を変え頑張るのがいつもの仕事ですが、そのお客様の登山人生に寄り添うような関係になると、無理なのはわかっているけど経験しておけ、ということができる。1回1回の登山じゃなくて、その先まで見据えた布石を打っていけるわけです。

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そもそもガイドに何を求めるか

登りたい山、ルートがあって、そこに自分の力が足りないと思う、もしくは足りているか不安、というときにガイド登山を利用する、という人が多いと思います。

でも、その登りたい山、の情報はどうやって?雑誌?知り合いのフェイスブックやブログ?

登山ガイドやっていたり、自分で地図見てコース引けたりするようになった人からすると、それではとってもミーハーなところは浮かんできても、そっから先の世界への扉は開かれないんじゃないの?と思ったりします。

例えば、厳冬期の赤岳に行きたい、と思うことはあっても、冬期の槍ヶ岳に行きたい、とはなかなかならないんじゃないでしょうか。ましてや厳冬期の北岳とか。

登りたい山がハッキリしているときの依頼、まさにスポットでお願いされるガイドを、私はスポット医だと思っています。ツアーガイドもそう、個人ガイドでも告知して集めるパターンはほぼそう。お客様が能動的に山ややりたいことを決めてガイドに依頼する、通常の形だと思います。

スポット医では1歩先の扉はそれでも開かれるかもしれないが、2歩先は開かれない

例えば、スポットでお願いされたガイドも、もちろん商売でやっているわけで、「私の力でどんなところに行けますかね?」って伝えればいろいろ連れて行ってくれると思います。現状のアナタで行けるところ。体力的にも、経験的にも、技術的にも。

バリエーションやってみたいんですよ、っていえば、ある程度の体力があれば、夏の前穂の北尾根とか、槍の北鎌尾根ぐらいだったらほとんどのガイドは確保なしで登れるでしょうから、お客様に体力があれば、登攀技術がなくても、なんとか連れて行ってくれると思います。

冬山がやりたいんです、っていえば、硫黄や天狗登った後、赤岳ぐらいだったら問題なく連れて行ってくれると思います。

でもその先の世界は?どの先の世界まで想定して考えてくれる?

まず、スポットで1回や2回ご一緒しただけのお客様を誘わないし、お客様から言われても、事前の講習的なモノを入れるか、断るか、のガイドが多いんじゃないでしょうか。

その先の世界になると、そもそも努力や練習までして行きたいのか、よくわからない。そして、何が足りていないか、スポット医では判断するのが難しいんです。1回の算数のテストを見て、「計算弱い」までは分かっても、「小数点以下の掛け算した時によく小数点打つ位置間違えるよね」とは分からない、そんな感じ。

かかりつけ医になると将来を見据えられる

冬やる人で年に10回ぐらい、冬やらない人だったら、夏の間に月一ぐらいご一緒するようになると、強さ、弱さ、趣向が分かってきます。この人は荷物が重い、このペースで行くとばてるからゆっくり入る、ご飯食べてなくても心配ない、将来冬山志向、岩稜が好き、みたいな。

そうすると、その先を見据えていろいろできます。荷物の話をしたり、ペースをコントロールしたり、行動食の話をしたり。

おそらく、Yamakaraはクライミング体験講習が最も多い登山ツアー会社だと思うのですが、それも、次の世界を見据えると必要だと思っているからやっているわけです。最低限の登攀技術。これができれば世界が広がる。

冬の赤岳だって、テント泊にこだわっているのはそういうわけです。もちろん赤岳鉱泉がいい小屋なのも知っています。でも、ここで冬のテント泊しておかないと、次の世界に行けない。冬の赤岳をゴールとしてスポットで考えるか、成長のストーリーの中で考えるかで、宿泊場所が変わってくるのです。

今回はまさにそうで、登れなくてもいい経験ができる、もちろん登れればいいけど、それは主目的じゃない、ということができる。

だから、ツアー会社やりながら、そっちで次の世界を見てみたい人の個人ガイドをやっている、ダブルスタンダードになっています。

次の世界を見せるには、かかりつけ医にならないと私は無理。もともと私は記憶力で勝負するガイドだと思っているので、そのお客様のプロファイルが十分にはない中で少人数のハードな世界でご一緒するのは得意じゃないんです。

逆に、次の世界が見たくて飛び込んできてくれて、プロファイルさえ厚くなってくれば、スタート地点は問いません。今回の2人だって、ツアーの中で飛びぬけて体力があるわけでもないし、メンタルに強いわけでもない。ただ、次の世界、となった時にひたむきに努力することができた2人、です。

どのガイドもそうやっているんじゃないかな

あんまり他のガイドさんがどう考えているのか知りませんが、大体個人ガイドのページ見にいくと、カレンダーに「プライベートガイド」的なスケジュール入っていたりするじゃないですか。一般公募の登山と分けて力量のわかっている人だけを連れていける世界。多分、似たような思考なんじゃないかな。

もし同じような思考なんだとすると、かかりつけ医的な、相性の合うガイドを見つけたら、できる限り浮気しない方がいいと思います。どのガイドも、常連さんになってきたらその人の行きたいところと成長具合に合わせていろいろ考えているものです。そして、ご一緒すればするほどそのストーリーの精度が高まる。来年ここに行きましょう、って話から、3-4年後になると思うし、まだまだ経験積まなきゃいけないけど、ここに行けるように頑張りましょう、という話に変わってくる。かかりつけ医にプロファイルをため込んだ方が得だし精神衛生上もよい。

個人で行くのはいいと思います。毎回ガイド登山である必要はもちろんない。でも、「私にXX山行けますかね」って言われても、スポットだとわからないんですよね。そういう個人登山まで相談できるような関係ができると、登山の幅が一気に広がるでしょう。

いつの間にかハマっている

ここまで読むと、かかりつけ医を持ちましょう、に聞こえるかもしれませんが、言いたいことはそうではありません。次の世界って言ったって、ほとんどの人は自分の行きたいとこリストで手一杯で、次の世界どころじゃない。そもそも登山にそんなに時間を費やすことはできない。

でもね、今回行った2人だってはじめから「山田さんの常連さんになろう」と思って登山してたわけではもちろんない。だんだんと次の世界を見せられて、クライミングして、泣かされて、無力感を味あわされて、それでも頑張ったら登れるようになって、そうするとまた次の世界が見られて、どんどん見ていくうちに、知らない世界を見ることに没頭しはじめちゃった。

世の中のほとんどの人はスポット的にガイドやツアーを使うし、太田さんだって最初に北岳行ったときはただ一緒に飲む人だったし、阪間さんだって最初に行ったのは加仁湯っていうそもそも登山でもないツアーでした。その時はこんなことになるとは思ってなかったはず。

だから、「かかりつけ医を探した」のではなく、いつの間にかハマっている、という言い方が正しいと思います。でも、同じような機会を持っても、人によって全然違う。昨年、クローズドで赤岳に13人。選抜した13人が行ったわけですが、今年クローズドにお誘いするときに残ってるのは3人。そんなもんです。

自分の世界が手一杯な人はそれでいい。でも次の世界を見たいならば、ガイドとの付き合い方、ガイドの使い方を考えるのがいいと思います。自分が見たことのない世界を、自分の努力だけで見に行くのと比べるとかなりの近道になるでしょうから。

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山日記
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経営と登山のあいだ
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