いきなりお見苦しい写真ですいません。年末、北海道旭岳で久々に耳をやってしまって。水疱ができてしまって、凍傷です。
今は治って元通りなんですが、久々に金田先生の本を読み返してみたので、凍傷の予防と処置についてまとめてみます。
興味ある人は、ぜひこちらの本を読んでみてください。残念ながら、絶版なので、中古しかありません。生前お会いする機会がなかったのですが、金田先生も一昨年にお亡くなりになられています。
凍傷が起こるメカニズム
凍傷が起こるメカニズムは2つあるそうです。
一つは、急速な冷却によって細胞内の水分が凍結してしまうこと。
もう一つは、寒冷に長く晒され、放熱を防ぐために、血管が収縮、毛細血管が収縮すると、血管内の血行が悪くなり、循環が停滞し、手足が腫れる。そして、血管壁が変性し、血管内の水分が血管外に染み出して水疱ができること。
いずれの場合でも、「寒冷」の他に「ストレス」が大きく影響していて、同じ装備で同じ行動でも、飢え、脱水、疲労、精神面でのストレスなどで差が出てくるそうです。
凍傷の原因は初歩的ミスがほとんど
十一月の八ヶ岳の稜線を軽登山靴で歩いた、稜線上での休憩時に風で手袋を飛ばされた、テント内に登山靴を入れるのを忘れ、冷たいままの靴で歩いた、素手でザイルを操作した、素手で雪洞を掘った、スペアの手袋がなかった、渡渉時に靴を濡らした、スパッツ、オーバーシューズを使用しなかった、オーバーミトンがなかった、など、「エッ」と思われるような原因が半分以上を占める。
小さなミスが、気がつけば大きくなって取り返しのつかないことになっていた、ということがあまりにも多い
凍傷に限らず、冬山で気をつけたいなければならない金言です。
凍傷の予防の七か条(金田先生の本より)
1. “登攀、冬山の行動をスピードアップせよ”
冬山で、ペース落としてください、とか、ゆっくりだったら行けるんですが、とか言われることがあるんですが、それ自体リスクを高めていると思った方がいい。スピードが命です。
2. “脱水に気をつけろ”
特に行動中、魔法瓶から飲む温かい飲みものは、凍傷予防の薬だと思っていただきたい。
しっかりテルモス持って、温かい飲み物を持っていきましょう。
3. “湿度と風には十分配慮せよ”
同じ温度でも風の有無で全然体感温度が違うのは経験のある人が多いと思います。そして、温度が比較的高くても、湿り気の多い雪が対処しにくいのもその通り。
4. “装備の工夫”
本に書かれていたのは、装備選びの工夫だけでなく、使い方の工夫。
スペアの手袋を持っていることや、登山靴を少し大きめにすること、金属を握るときに注意すること、ロープを握るときに曲がっていると血行が悪くなると認識しておくこと
5. “ビバーク中の凍傷が多い”
すでに疲労しているので、すぐに風が避けられるようにすることが大事。
私はよく冬の赤岳で行者小屋でテント泊するのですが、到着したら、お客様急かしてでもすぐにテント張ってしまいます。大事。
6. “予防薬はあるのか”
薬はないそうです。
そして、喫煙は凍傷には禁忌。
7. “寒さを肌で感じよう”
寒さに対する早めの対処が遅れている場合が多く、経験して対処法を学んでいくしかない、と締めくくられていました。
凍傷になってしまったら
凍傷の始まりはジンジンした痛みから始まる
ここまでは経験ある人も多いんじゃないでしょうか。ここまででイエローカードだそうです。
凍傷になってしまったら、医師の診察を受けなければなりませんが、2つ大事なことが書かれていました。
まず、水泡、血泡を絶対に破ってはならないこと。破らないように、軟膏の塗布も行わないそうです。もし破れてしまった場合には、皮膚をなるべく湿潤状態に保っておくことが大事だそうです。
次に、できるだけ早く温浴すること。できれば消毒薬を入れた薬浴。40度から44度のお湯が良いそうです。現場で温浴が不可の場合は脇の下で温める。温浴とともに、温かい飲み物を摂取することも重要だそうです。
結局は体力が全て
夏山以上に冬山は体力が必要です。天候の変化も大きなリスクになり得ますし、雪の量によってコースタイムなんてあってないようなものです。
そのために必要なものは、スピード、精神的余裕、時間的余裕。全て体力があれば生まれてきます。
人気ルートでも、天候によって、遭難や凍傷が隣り合わせだということを認識して、頑張って体力つけましょう。