先日、二子山の弓状のジョーズというルートを登りました。
登った後、たまたまmickipediaで有名な植田くんがいて、ジョーズ登ったよー、って言うと、「お、初の12ですか?」と。
その時は100岩場をみて登ってたので、いや、11c だよ、って返事したんですが、後から考えてみたら、植田くんがそんな勘違いしないだろうな、と思って。で、関東周辺の岩場をみてみると、やっぱり12aになってました。
クライミング、特に外岩のグレードにある程度慣れている人だとこのぐらいのブレ(って言っても、12前後で2グレードのブレってなかなか大きい気がしますが)は、違和感なく受け入れられると思うのですが、クライミングはじめて間もない人だと、頭に?が浮かぶかと思います。
なので、今回は、外岩のグレードについて知っておくべきこと、を書いてみます。
10台クライマー以下に向けての話ですので、グレードについて深遠な議論が読みたい人は、以下のリンクまで。
ボルダリングのグレードの決定方法~前編:グレードの定義、前提となる考え~ | Mickipedia
今回のジョーズに関して
自分の限界グレード周辺のグレーディングというのは、客観的にみるのが非常に難しい。
今回の場合、私は11dはまだ登っていなくて、11cは神戸の岩場のスネークヘッド、二子・祠エリアの鬼が島、柴崎ロックの優等生の3本。
感覚的には、この3本よりも強度もあるし難しいけど、2グレードアップと言われるとそこまでではないかな、という感じ。なので、11dと言われると納得感があります。
それでも、他に12を登ってないので、わからない、というのが正直なところなんですよね。先人の教えに従うしかない。今後、私が何本か12登ったら、ジョーズは12ないよね、なのか、ギリギリ12aでいいんじゃね?とかそんな感覚が生まれてくると思います。
そんな訳で、このルートを12と評する人もいるわけで、12クライマーになったことにしておきます!
そもそもクライミングのグレードとは
外岩のグレードは、初登者がつけます。ちなみにルート名も初登者がつけます。
シンデレラ、かぼちゃ馬車、トムソーヤみたいなルート名が並ぶこともありますし、ペトリューシカ、火の鳥、春の祭典ってストラヴィンスキーのオペラがずらりだったり、謙譲の美徳、北落師門なんていうなんとなく引き締まった名前がつくこともあります。
岩場が開拓されると、昔だと岩と雪、いまだとRock & Snow で発表することが多いです。
最近で言うと、二子山の西岳周辺の開拓と再生。平山ユージさんをはじめとする錚々たるメンバーがルートを開き、そのルートがRock & Snow に載っています。
私も、沖縄にクライミングに行く際には、大昔のRock & Snowにお世話になりました。
ちなみに、100岩場の巻末には、発表時の資料元が載っています。岩(岩と雪)、R(ロック&スノー)が多いですが、たまにCJ(クライミングジャーナル)、フリーファンもあります。佐久の岩場なんかはフリーファンで発表でしたね。
初登者がグレード・ルート名をつけた後
ルート名は基本的に未来永劫変わりませんが、グレードは初登者がつけてから、変化するものです。変化するのは大きく分けて2つの場合があります。
一つは、第二登者、第三登者と続いて、改訂されていく場合。グレード自体多くの人たちのコンセンサスで決まっていくものなので、多くの人の意見を含むことで変わっていきます。
例えば、河又のミヤザキミドリ(100岩で10a、関東周辺の岩場で10b)
(略) これもかつて5.9とグレーディングされていたが、それは相当に危険だ。しかしこのルートが登れないとこの岩場が楽しめないというのも、事実ではあるだろう
関東周辺の岩場
ざざっと読んでみると、「かつてはXXとグレーディングされていたが」という文言は結構多いです。
もう一つは、風化してホールドが欠けた、多くの人が登ってスタンスが磨かれた、などルート自体が変わった場合。これも完登者が増えていく中で、なんとなくのコンセンサスでグレードが決まっていきます。
クライミングのグレードには幅がある
完登者が増えていく中でグレードが決まっていく、と言っても、決めている機関があって集計していたりする訳ではありません。
関東のクライマーだと、多くの人が参考にしているのは、「日本100岩場」と「関東周辺の岩場」という2冊の本になります。その他、各地にローカルなトポの本があったりします。例えば、「小樽赤岩クライミングガイドブック」や「三宅島クライミングガイド ルート編」などがあります。
この、「日本100岩場」と「関東周辺の岩場」の間でもかなりグレード差があります。100岩の方が低い場合が多いかな。
よく行く二子・祠エリアでこんな感じ。
ルート名 | 100岩場 | 関東周辺の岩場 |
甘納豆 | 10d | 11a/b |
ラッキーキャット | 11b | 11b/c |
フランシーヌの場合 | 11c | 11d |
Moon | 11c/d | 11d |
ウォームアップ | 11a | 11b |
話がピーマン | 10a | 10b/c |
そうかと思ったら、今度行く北川みたいに、関東周辺の岩場の方がグレードが低かったりするので、一概には言えません。
標高みたいに決まった数字があるのではなく、このぐらいは差があるものだ、と思っておきましょう。
体感のグレードがないうちは高い方のグレードを採用すればいい
14台、15台で記録を残すようなクライミングになれば話は違うでしょうが、10台中盤ぐらいのクライマーにとって、自己最高グレード、と言うのはただの自己満足なわけで。だったら、高い方のグレードを採用すればいいと思っています。
ルートにグレードがついていること自体、色々な意味で特に初心者にとっては素晴らしいことだと思っています。ある程度クライミングと向き合うと、グレードじゃなくて、いいルートかどうか、みたいな視点が出てきますが、それは追々学べばいい。
まず、グレードがあることによって、安全面での担保がある程度あります。10台クライマーが不用意に12や13に取り付いてしまったら、事故のリスクは高まるでしょう。
そして、グレードは、個々人の次の課題を明確にしてくれます。グレードは突飛に難しい課題に取り付いたり、簡単すぎる課題に取り付いたりする可能性を減らしてくれます。特に外岩に行く回数、外岩での1日のトライ数を考えると、学べるルートを選ぶ指針となるグレードは大きな役割を果たしているのです。
最後に、モチベーションです。何より限界グレードを登ると嬉しい。丸得って言われてもうるしぎ登ったらイレブンクライマーだし、本によって違うけど、ジョーズで12クライマーになったのだとモチベーションが上がります。もちろんその上で、誰もが認める12ルートを登りたい、と思うわけです。
独自でグレーディングするならともかく、外岩で誰かが登ってグレーディングしたグレードを採用しても、安全面、課題の明確化にはそれほど影響するとは思えません。それなら、モチベーションが上がる方のグレードを採用すればいい。どうせみんな次の課題に行くための発展途上なのだから。
そうは言っても誰もが認めるグレードを登りたい
これが今の私の本音。うるしぎ登って11クライマーになった時も嬉しかったけど、その後、沖縄でアンダーギーマン、小樽でFFF登ったあたりから後ろめたさなく11クライマーです、と思えるようになったし、今回もノースマウンテンか鬼ごろしあたり、誰もが、12だよね、って言えるルートを登りたい。
それが遠くない、と思えるのも、今回のジョーズが12と評する人もいる、という自信から来る部分が大きい。次に弓状行く時は、ノースマウンテンとりつきます!