また一つ起こってしまった悲しい事故を減らすために、我々は何ができるのか

スポンサーリンク

SNSで流れていた劔で行方不明になっていた女性の遺体発見のニュースに悲しみながら、今、私は「平成30年における山岳遭難の概況」を開いています。

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/chiiki/H30sangakusounan_gaikyou.pdf

激増している遭難者の数は、遭難者自体が増えただけではなく、携帯電話の通話域が広がり、通報しやすくなったということもあるでしょう。これ自体は見方によってはいい傾向と言えるかもしれません。遭難者の増加ほどは負傷者が増えていないことがその一端を示していると言えるかも知れません。しかし、昭和30年代から少しづつではあるものの増加を続けている「死者・行方不明者」の342人という数字を見たときに、無力感を感じざるを得ません。連絡方法が発達して、携帯の通話域が広がり、地図アプリが発達して、ヘリも呼びやすくなった。装備もよくなっただろうし、道も整備されてきたと思う。なのに、減るはずのこの数字が減っていない。この数字を1つでも減らすために、我々は何ができるのか。

スポンサーリンク

限られたデータから何が読み取れるか

この山岳遭難の概況のクロスデータを持っているわけではないので、このpdfからわかることを考えてみましょう。

まず、年齢層です。

亡くなっているのは、圧倒的に60代、70代。50代(42人)の倍以上の60代(101人)、70代(110人)が亡くなっています。

なんと、全体構成の6割以上が60代と70代。

もちろん、この数字は参加者数が母数にあって、死亡事故割合を出さないと意味がありません。しかし、それがなくても、 50代からの跳ね上がり方は異常です

還暦が近づいてきた来たら気を付けなければならない。肝に銘じましょう。

ここからはデータで読み取れることではありませんが、60代、70代の死亡事故が多いことについて、2つのことが考えられると思っています。

1つは、その頃が、実際の体力が、自分の思っている体力を下回り始める時期だということ。

登山は、体力がなければ事故が起こる、というほどシンプルなものではありません。体力がなくても、ないなりに楽しめるものです。ただ、それは自分自身の体力を把握して、自然に対して畏怖の念を忘れずにいる、という大前提があります。

60代、70代で亡くなっている方々は、同年代と比べたら圧倒的に体力があったり、経験があったりする人たちなんじゃないかと想像します。逆にそれが仇になって、過去の自分の体力から逃れられずにいるんじゃないでしょうか。体力が落ちてきても、楽しめる場所はあります。ただ、過信していては自然は許してくれません。

もう1つは、山岳会などの集まりで、60代、70代が現役バリバリで居ざるを得ない、誰も止められない状況にあるんじゃないかということ。

先日、とあるお客様から、「山岳会に入ってるんだけど、うちの山岳会の70代たちがもう化け物みたいに強くて」という話があってすごく違和感があったんですよね。どんなスポーツでも、70代が第一線で引っ張らなきゃいけない状態って異常です。そして、そういう人たちも30年前には40代で70代の先輩たちからいろいろ吸収して、先輩たちを追い抜いて行ったと思うんですよね。そして、その会の第一線の人たちが新陳代謝していった。大学山岳部もそう、社会人山岳会もそう。

若い人たちが、特に組織登山をしなくなったことによって、組織の中で彼らに引導を渡す人がいなくなってしまった。GWや冬山での社会人山岳会の事故のニュースを見るたびに、そういうことが原因の一端なのではないかと想像しています。

お願いだから単独登山はやめてほしい

もう一つ。単独登山について。

342人中、何人が単独登山だと思いますか?3割ぐらい?半分くらい?

答えは、206人。6割を越えるんです。6割が単独。もう比較の必要はありません。単独登山はやめてほしい。

ちなみに全遭難者に占める単独登山者の割合は37%。4割切るんです。単独でなければ、滑落しても通報してもらえる可能性も高いし、道迷いでも早期に声かけあえる可能性が高い。

実際、単独登山の1,170人の遭難者のうち206人(実に18%!)が死亡/行方不明なのに比べて、単独ではない登山者は、1,959人の遭難者のうち136人(7%)です。

もう一つ。残念な事故はゼロにはなかなかできないでしょうが、行方不明というのは、残された家族にもいろいろなダメージがあります。その行方不明者、44人中35人が単独。8割です。

ガイドをやっていても、「XX山に一人で行きたいんですけど、私で行けますかね」って質問、時々あります。ダメです。実力とかそういう問題じゃない。混雑している人気の山だから単独でも人がいるから大丈夫?

剱は圧倒的な人気の山ですよ。それでも時間帯が少しずれると悲しい事故も起こります。

事故を少しでも減らすために。ガイド付きでしか行っちゃダメ、ツアーでしか行っちゃダメなんていうつもり、全くありません。実力着けて、自分たちの力で行ってみたいという気持ちは分かります。

でも単独はダメ。ダメ、絶対。

スポンサーリンク
登山の心構え
スポンサーリンク
atsushiyamaをフォローする
スポンサーリンク
経営と登山のあいだ
タイトルとURLをコピーしました