「自己責任」という言葉で切り捨てる無責任さ

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そもそも山は誰でもどこでも自己責任。もっと言うと、生きていれば何があっても自己責任。それが、なぜか無茶だと思われるような時や、わざとでもルートはずれるときは自己責任とか言われる。その自己責任、は何を意味しているのか。

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よく使われる自己責任の例

「冬の富士山は危険ですから、自己責任ですからね」なんてよく言われます。どういう意味?夏の富士山は誰かが責任とってくれる?夏の富士山だって死亡事故も起こっているし、怪我くらいだったら日常茶飯事。当たり前のようにハジメテサンが4000m峰に30万人近く登っている夏の富士山と、ある程度スキルのある人だけが登っている冬の富士山だったら後者の方が事故率も低いかもしれない。でも、よく使われる、「冬の富士山は自己責任ですよ」。話は、冬の富士山に限らず、バリエーションルート然り、冬山然り、夏山でもちょっとルートはずれようとすると、すぐにこういうことを言う輩が出てきます。

もちろん、状況としてその言葉を使いたい背景はよくわかります。特に無知な外国人なんかが、前者のカテゴリに入るはずが後者に迷い込んじゃっている現実があるわけで、それを止めたい発言なんでしょう。それにしても「自己責任」で片づけるのは思考停止じゃないでしょうか。

もしかしたら、夏シーズンの登山道は整備された道で、そこをルート的にもしくはシーズン的に外れると救助や保険の適用が変わると思っている人もいるかもしれません。ただ、ルートがどうあれ、救助の体制は変わりませんし、保険はピッケル、アイゼン等を使うかどうか、という区分だけ。夏シーズンにバリエーションに行こうが一般登山道にいようが変わらないはずです。

そもそも、自己責任、だけど、自分勝手、じゃいけない

最後の責任は、パーティーで負うとしても、自己責任で何も起こしてないからと言って、他人に頼ってないわけではありません。その道は誰かが整備したものだし、その小屋があるからある程度安全が保たれているし、救助の体制も誰かが整えてくれてる。その事実を無視して自己責任なんて言う言葉を使うと、逆に自己責任だったら何やってもいい、という思考になる人も出てくるでしょう。

そういうインフラを整えてくれている人たちへのリスペクトを忘れないようにしながら、最低限事故を起こさないようにする、それが責任の範囲、というもの。そして、その線引きはそれぞれのパーティーで違ってくると思うのです。だから、ここからは自己責任、というときに言っている人は、「リスクが高いですよ、あなたたちには無理なんじゃないの?」と警鐘を鳴らしたいんでしょうけど、それはルートだけではわからない。パーティーの実力ごとに違ってきます。

ただ、一方でパーティーが背伸びしたルートにトライして事故を起こす、ということが起こっていることも事実なわけで、それを防ぐ手立ては考えなければなりません。リスクが高い、ということを伝える、別の共通言語を持てないか、ということだと思います。そうすることによって、夏用登山靴に軽アイゼンで富士山行っちゃうような人をその手前で止められないか、と。

必要な情報はリスクの高低

問題は、責任の所在ではなく、リスクの高さを正確に伝えられること、何だろうと思います。それには、共通言語がなさすぎる。「先週滑落した人がいるので気を付けてくださいね」っていうようなものをもっと具体的に伝えられればいいんじゃないでしょうか。

なんでそれができないかというと、共通のモノサシがないからじゃないかな。だから、ちょっと思考実験的ではあるけれど、グレーディングを作ってみたらどうかなと思うのです。「今日の穂高の上部は例年と違って滑落しやすいからいつもだと8級ぐらいだけど、9級ぐらいの難度になってるから気を付けてね」的な。

やっぱグレーディングが必要なんじゃないだろうか

書きながら、10年前と同じことを言ってる気がしてきました。

山岳界を憂う呟きたち
山が好きで仕方がない人々による深夜の呟き。登山はスポーツかアートか云々かんぬんetc

言いたいことは大体このtogetterにまとまってるつもりなんですが、クライミングのグレーディングってよくできてるなーと思うんですよね。最初に登った人がグレードつけて、みんなであれやこれや言いながらなんとなく整合性とっていく、という手順が。ホールドが欠けたり、スタートポイントが下がったりして、グレード変わるときもみんなでコンセンサスをとっていく。デシマルとフレンチと、みたいなグレードのモノサシが世界で統一できてないのがちょっとアレですが、決め方自体は学ぶところがとても多いと思うのです。

もちろん。山はクライミングと違って、天候の影響をがっつり受けますし、そんなシンプルじゃないだろう、というのは分かります。でもアルパインクライミングでは級数を一応決めてるわけで、登山もできなくはないと思うんですよね。

このあたり、興味がある人は、長野県だったり、岐阜県だったり、富山県だったりでグレーディングを設定しようということ自体は始まってたりするので、「山歩きみち」での長野県の原一樹さんのインタビューもご一読をおススメします。

長野県観光部 原一樹さん|未組織登山者の遭難対策に山のグレーディングでアプローチ
フリーペーパー『山歩みち』2016年春 022号掲載Profile ※2016年時点はら・かずき 1953年、長野県生まれ。長野県教育委員会事務局スポーツ課長を経て、2013年4月より長野県観光部山岳高原観光課に配属。「信州山のグレーディン

答えはないよ。でも、みんな自分の中で考えよう。そして、議論したら、いいモノが見つかるかもしれません。

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山日記
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経営と登山のあいだ
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