富士登山の「頂上ご来光」を見直す時期なのではないか

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昨日、富士山で落石による死亡事故が起こってしまいました。そして、今日、レンタルの(厳密にいうと弊社でオペレーションを請け負っている石井スポーツレンタル山専の)お客様であることもわかりました。亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りいたします。

こういう事故を防ぐために、落石に注意しましょう、とかフォールラインに入らないように、とか通常の登山で言うとごもっともな御託を並べても実は富士山では通用しません。1日に最大1万人登る富士山の混雑ぶり、その多くがご来光を目掛けて暗い闇の中を歩くことを考えると、もう「頂上ご来光」自体を見直す時期なのではないかと思います。

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富士登山”だけ”異常な状態

例えば、私がよく行く山では、キリマンジャロもキナバルも夜間登山をします。ただ、この両者、小屋の予約が制限要素になるので、登山者数が限られます。そして、全登山者、ガイド付き登山が義務付けられています。

キナバルでは、頂上までのラヤンラヤンというゲートの開閉で時間がコントロールされ、通常2時をすぎないとそこを通過することができません。そして、そのゲートはレンジャーがコントロールしていて、雨が強いときはゲートがあかないことが登山者に通知され、有無を言わさず登山を中止させられます。キナバルでは落石の危険はほとんどありませんが、滑落の危険がある箇所はいくつかあるため、強雨の時にコントロールします。

キリマンジャロでは、レンジャーが強制的に登山中止させることはありませんが、登頂を狙う小屋のキャパシティがあるため、それほど混雑することはありません。ノーマルルートのマラングルートでは、最終のキボハットから火口の淵のギルマンズピークまでは富士山と似たような山様ですが、同時に100人以上入っているのを見たことがありません。

一方日本の山の標高トップ5を見てみると、北岳、穂高、間の岳、槍ヶ岳などになるわけですが、確かに槍ヶ岳の連休の時などは混雑が目に余りますが、別に夜中に登るわけではありません。広河原からの北岳、間の岳。上高地か新穂高からの穂高、槍が岳。それぞれ、交通機関も夜間登山の弾丸に対応しているわけではなく、連休の混雑も、小屋の混雑、登山道の混雑など、フラストレーションになることはあっても、それで安全が阻害されるほどだ、とは言えない状況かと思います。

富士山は違います。2か月間、多いときで1週末に1万人。その多くが夜間登山で頂上ご来光を目指します。

御来光前の特に吉田口の頂上手前のカオスって、経験した人じゃないとわからないんじゃないかなと思います。そして、ガイドや山岳関係者も何度もそこを経験した人じゃないとコメントできないんじゃないかと思います。そこには登山の常識が通用しない世界があります。道端で寝ている人が凍死していた事故、ということも過去にありました。本当に何が起こってもおかしくない世界。10年前、そのカオスを少しでも変えようと、ビニルカッパ、スニーカー、ランプなしの人たち撲滅運動として始めたのがレンタル事業でした。

2010年に2000人にご利用いただいたレンタルは今や3万人以上。富士登山者全体の2割弱がうちのお客様です。安全登山に対する一定量の成果があったとはいえ、今回のような事故が起こると、まだまだであることを痛感します。

どこからでもご来光は見られる

実は、富士山のほとんどの小屋からご来光は見られます。

4つの登山道がありますが、すべてが東向き。西側に登山道が無いため、北側の山梨側・河口湖口、南側の静岡側・須走口、御殿場口、富士宮口、ほとんどの山小屋からご来光が見ることができます。

しかし、頂上でのご来光のツアーがほとんど。弊社のレンタルのお客様と接していても、ほとんどの方が頂上ご来光を目指して行程を組まれています。

そのアンチテーゼとして、うちのYamakaraでは山小屋ご来光のツアーを出していますが、比較的睡眠時間は長いし、寒い中歩かないから体力奪われないし、明るい中登るから安全だし、ほんと、いいですよ。

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登山装備無料レンタル付ツアー・ヤマカラ

こうしたらいいんじゃないか

上高地ならば釜トンネルの通過時間が制限されているから、2時に上高地出発、みたいなことは、上高地に宿泊しない限りできません。

ところが、富士山の8割以上が登る河口湖口、富士宮口ではマイカー規制しているとはいえ、19時越えてもシャトルバスが出ています。もう、夜間弾丸登山して下さい、と言っているようなもの。まずはこのシャトルバスの最終を15時ぐらいまで前倒すことが必要でしょう。

そうすると、頂上での混雑はかなり緩和されるはずです。そのうえで必要に応じて山小屋の旅館組合主導でツアー登山を山小屋ご来光に変えていく。今のシステムからはかなり変更点がありますが、不可能ではないと思います。

そのぐらいしないと、今回の事故は再現される可能性があると思っています。そして、すべての事故は「不運」で片づけることは可能ですが、それでは1歩も前進しないので、富士山に関わっている我々がなんらかここから学ばないといけないんだと痛感しています。