リアルすぎてヤバイ、富士山での滑落事故。この時期行けるところまでいく、の判断はしちゃダメ

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今朝、今週末槍ヶ岳に行く、アイゼン初めて、って人がレンタルに問い合わせ来たので、全力で止めていました。

この時期、よく聞かれるのが「行けるところまで行って様子見ます」です。でもね。様子見れるだけの判断がそんなに簡単なら、世の中誰も事故らないのよ。なぜなら、アイゼン歩行もアイゼンなしの雪山歩行も登りよりも下りが大変。登れても下れません。だから全力で止めますが、あんまりわかってもらえないんですよね。レンタルしなくて、アイゼンなしで行かれてももっとやばいし。難しい。

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富士山でも事故が

そのツイートへの返信で知ったのですが、富士山でも昨日事故があったみたいですね。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191029-00000001-sut-l22

動画もリアルなので、みんな見て自分に置き換えてしっかりと考えてほしい。ほんと、助かってほしい。

雪の富士山は本当にヤバいです。ちゃんと理解してない人は行っちゃダメ。

夏山とは全く違う、行きはよいよい、帰りは恐い

夏山で行きと帰りが違うといえば、疲れとひざの痛みぐらいでしょうか。雪山は登りと下りでまったく難易度が変わり、登れる場所が下れないということが良くあります。これは、アイゼンをはめていてもそうじゃなくても同じです。

そんな無理な登山じゃなくても、ふと振り返る習慣をつけましょう。振り返ってみて、冷静に判断すると自分がその斜面を下れないとわかる斜面でも、登っていると見えなくなります。

今年の春の話です。ガイドの若手2人(夏の富士山程度しかガイド経験なし)と爺が岳東尾根に行ったのですが、2人とも結構な斜面でもガツガツ登っていく。2人を止めて、「ちょっと待って。この斜面、登れると思うけど、下れる?」って聞くと、急に怖くなったみたいで、「無理ですね」ってことでその時点で敗退でした。もちろん体力的な余裕もあったし、ロープもあったし、確保もできたけど、時間的な制約も含めて、その時点での敗退は正しい選択だったと思います。覚えておいてほしいのは、体力に余裕があっても、登りに集中しちゃうと的確な判断ができなくなることがあるということ。慣れた人でも、雪山では頻繁に立ち止まって、自分が戻れるのか斜面を見ていくことが大事です。慣れてない人が、見に行って判断とか、無理です。やめましょう。

もうちょっと冬に入った方が対処しやすいことが多い

滑落に限った話で言えば、アイスバーンになっている状態が一番滑落しやすいわけで、雪が薄被りで、日中温度が上がって、雪が水に戻って、夜に再度冷える、というような状態の方が危険です。だから、この初冬の時期というのは、雪がしっかりついて、滑落しようにも埋まってしまうような積雪量の時期と比べてもリスクが高い。もちろん、後者は後者で降雪で閉じ込められてしまうリスクだったり、雪崩リスクだったりがあるわけですが、アイゼンひっかけて転倒、骨折、みたいな事故にはなりにくい。

そして、この初冬の時期はとても装備が難しい。同じ10月でも、3000mの稜線が夏山みたいに暑い年もあれば、積雪で凍死する人が出るほど寒い年もある。天気も予報と打って変わって寒気がドカッと入ってくる、みたいなことも起こります。

もちろん雪山やるなとは言いません。素晴らしい世界が広がっていますし、夏山とは全く違う楽しみですから、多くの人に知ってもらいたい。けど、慣れてない人は、初冬よりももう少し雪がしっかりつくまで待ちましょう。そして、いろんな山にチャレンジしたくても、毎年日帰りの黒斑山や赤城山くらいからアイゼンの使い方を体に思い出させて、徐々にレベルを上げていきましょう。