エベレストは簡単になったか (2)

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私がエベレストに登る前、「エベレストなんてもう金さえあれば誰でも登れる時代だ」といろいろな方から聞いていました。そして、私が実際にエベレストに登るようになると、同じ方が「お前、エベレストに登るためには、●●山の××尾根と●○山の△壁と●○の冬季と・・・・ぐらいは登った後じゃなきゃ登れないぜ」とおっしゃいました。全部登るのに何年もかかる、というほどの数を。

 

結局、その方たちも実際に登ったことがあるわけではなく、伝聞でだれでも登れるようになったと聞き、私が登るとなって親身に考えてみると、あ、さすがにそうじゃないぞ、お前さすがにもっと経験積んでからじゃないと危なっかしいぞ、と忠告してくれたのです。

 

「エベレストなんて金さえあれば誰でも登れる」という言葉が独り歩きして、日本人の特に中高年登山者の方が安易に8000m峰に挑戦する風潮はよくないと思っています。私は、自分のお客様がセブンサミッツに登りたい、とおっしゃるといつも、「6つは行きましょう。エベレストはノースコル(7000m)で我慢しましょう。それ以上登るなら本気で24時間365日山のことだけを考えて1年以上トレーニングを積んでからになります。それだけつぎ込んでもいけるかどうかわかりません。おススメしません。」と言います。8000m峰はそれだけ簡単なものではないのです。しかも8848m。ほぼ9000m峰なのです。

 

三浦雄一郎さんが、足に重りをつけてトレーニングをしているというのを聞いて、私も足に重りをつけています、という方もいます。でも歴然たる事実として、雄一郎さんは昔から登っていて、第一線で活躍していた登山家・プロスキーヤーです。定年退職までサラリーマンをやっていらっしゃった方が60数歳からトレーニングして追いつくのは至難の業です。しかも同じことをやっていては無理です。相当のトレーニングを積まないとエベレストまでは届きません。

 

じゃあ、今でも第一線のプロのアスリート、一部の登山家しか登れない山か、というとそうではありません。50年前はそうだったかもしれません。でもこの50年間で積み重ねてきた「情報」は確実にエベレスト、高所登山を簡単にしてくれました。そして、医学の進歩、装備の進歩。実際、私自身、プロのアスリートという意気込みと意識での取り組み方で登頂しましたが、体力的には、プロのアスリートレベルですと胸を張れるレベルではありません。では、どういう取り組み方をしたか。次のエントリで取り組み方んだ私が取り組んだやり方について書きたいと思います。ポイントは、何が簡単になって、何がいまだに難しいか、ちゃんと仕分けをして、投下資本(時間、精神など)に選択と集中の観点をきちんと組み込むことです。